学園怪談
触覚……動けなくなるから×。味覚……食べる喜びが減少するのは苦痛だから×。視覚……絶対だめ、なかったら生きていけないので×。聴覚……なくても生きていけそうだが、音楽も聴けない、テレビも音なし、友達との会話も無理。私には耐えられそうもないのでこれも×。確かに菅沢君の選択が一番無難なのかもしれない。
彼はニヤリと笑うと、小さな小瓶を取り出してフタをひねった。
ツ~ン。
「あ、ゲホゲホ! なにこれ~、石油じゃない。いきなり嗅がせないでよ」
私はいきなりのことにむせたが、菅沢君は石油を大きく胸いっぱいに吸い込んでも頭を振って平気そうにしていた
「う~ん。やっぱり何にも感じないな。本当に俺の嗅覚はもっていかれたみたいだな」
菅沢君はその後も、嗅覚がないことを証明するようなエピソードを数多く残した。
まず、理科の実験授業で作ったアンモニア。これを嗅いでもまったく平気。誰かがロッカーに放置した開けかけの牛乳とパン。これらが梅雨時になって酷く腐敗して見つかった際に、みんなが吐き気を催して片付けられないでいるなか、一人で進んで片付けてしまった。しかし、最も決定的だったのは7月にはいったのある日のこと、下水管が何かの理由で破裂。バキュームカーも出動し、校内が汚物の臭いで充満して騒然となる大事件が起きた。口元を押さえて下校する生徒たち、なかにはあまりの異臭に気分が悪くなり救急車で病院に運ばれた生徒もいた。それでも彼は平然とした顔でゆっくりと歩き去って行った。
「すごいだろう? 俺は嗅覚を失ったけど、これはこれでかえって良かったのかもしれないよ」
始めのうちは気楽な菅沢君だったが、徐々に、ゆっくりとだが彼は変わっていった。
「わ~、今日の給食はカレーだ! 美味しそう」
カレー大好きな私は配膳された給食を見つめ、いただきますの挨拶をもどかしく待っていた。
「……カレーか、少しはマシかな」
菅沢君は元気が無い。給食といえばお代わりをするために、誰よりも先にたいらげるはずの彼が、最近では味気なさそうにボソボソと食べているのだ。
彼はニヤリと笑うと、小さな小瓶を取り出してフタをひねった。
ツ~ン。
「あ、ゲホゲホ! なにこれ~、石油じゃない。いきなり嗅がせないでよ」
私はいきなりのことにむせたが、菅沢君は石油を大きく胸いっぱいに吸い込んでも頭を振って平気そうにしていた
「う~ん。やっぱり何にも感じないな。本当に俺の嗅覚はもっていかれたみたいだな」
菅沢君はその後も、嗅覚がないことを証明するようなエピソードを数多く残した。
まず、理科の実験授業で作ったアンモニア。これを嗅いでもまったく平気。誰かがロッカーに放置した開けかけの牛乳とパン。これらが梅雨時になって酷く腐敗して見つかった際に、みんなが吐き気を催して片付けられないでいるなか、一人で進んで片付けてしまった。しかし、最も決定的だったのは7月にはいったのある日のこと、下水管が何かの理由で破裂。バキュームカーも出動し、校内が汚物の臭いで充満して騒然となる大事件が起きた。口元を押さえて下校する生徒たち、なかにはあまりの異臭に気分が悪くなり救急車で病院に運ばれた生徒もいた。それでも彼は平然とした顔でゆっくりと歩き去って行った。
「すごいだろう? 俺は嗅覚を失ったけど、これはこれでかえって良かったのかもしれないよ」
始めのうちは気楽な菅沢君だったが、徐々に、ゆっくりとだが彼は変わっていった。
「わ~、今日の給食はカレーだ! 美味しそう」
カレー大好きな私は配膳された給食を見つめ、いただきますの挨拶をもどかしく待っていた。
「……カレーか、少しはマシかな」
菅沢君は元気が無い。給食といえばお代わりをするために、誰よりも先にたいらげるはずの彼が、最近では味気なさそうにボソボソと食べているのだ。