学園怪談
「だ、だだ、大丈夫? 菅沢君? だめだよ……絶対に……」
私はその先を言えなかった。言おうとした内容は、きっと今の彼を刺激してしまうと思った。でも彼は推察してくれたのか、軽く鼻で笑うと『大丈夫』と言って電話をきった。
……そして三度目の電話。
『……いつもすまないな斎条。なんかさ、俺怖いよ。このままどうかなっちゃうんじゃないかって思ってさ』
「ねえ、鼻が臭わないだけで体は大丈夫なんでしょ? だったら学園に来た方がいいよ。一日中家にいたら気が重くなっちゃうでしょ?」
その日の私と菅沢君の会話は結構長く続いた。そして、その間に事件は起きていた。
『……ああ、そうだな『バタン!』……うおっと! 斎条ちょっと待って……おい親父。大丈夫かよ親父。布団で寝ろよ……ああ、悪い悪い。親父が酔っぱらってすっ転んじまっただけだ』
電話の途中でドスンという大きな音が受話器越しに聞こえて来た。菅沢君のお父さんの倒れる音が私にも聞こえた。しかし、酔っぱらったとはいえ、凄まじい音だった。
「お父さん大丈夫? そういえば菅沢君ってお父さんと二人暮しだったんだっけ?」
『う~、そうだよ……。まったく、ダメ親父でさ。はあ~……お袋も愛想を尽かすわけだよ……う~』
耳から聞こえてくる彼の声は受話器越しではあったが、息が弾んできているように聞こえた。
「どうしたの? 何だか少し辛そうだけど?」
『はあ、なんでもねえよ。ちょっと風邪でもひいたのかな、頭痛がする。はあはあ『ピー、ピー、ピー』ん、なんだ? この音は?』
受話器越しに、こもった電子音が鳴り響いた。どうやら彼の家の中で鳴っているようだ。
「何の音? 大丈夫?」
私は妙な胸騒ぎを感じ、受話器を握りなおした。
『はあはあ、おい親父! 何……音だよ、うるさ……ぜ! はあはあ、ちょっ……見てくるか……』
菅沢君は明らかに息苦しそうで、言葉も呂律が回らなくなりかけている。
私はその先を言えなかった。言おうとした内容は、きっと今の彼を刺激してしまうと思った。でも彼は推察してくれたのか、軽く鼻で笑うと『大丈夫』と言って電話をきった。
……そして三度目の電話。
『……いつもすまないな斎条。なんかさ、俺怖いよ。このままどうかなっちゃうんじゃないかって思ってさ』
「ねえ、鼻が臭わないだけで体は大丈夫なんでしょ? だったら学園に来た方がいいよ。一日中家にいたら気が重くなっちゃうでしょ?」
その日の私と菅沢君の会話は結構長く続いた。そして、その間に事件は起きていた。
『……ああ、そうだな『バタン!』……うおっと! 斎条ちょっと待って……おい親父。大丈夫かよ親父。布団で寝ろよ……ああ、悪い悪い。親父が酔っぱらってすっ転んじまっただけだ』
電話の途中でドスンという大きな音が受話器越しに聞こえて来た。菅沢君のお父さんの倒れる音が私にも聞こえた。しかし、酔っぱらったとはいえ、凄まじい音だった。
「お父さん大丈夫? そういえば菅沢君ってお父さんと二人暮しだったんだっけ?」
『う~、そうだよ……。まったく、ダメ親父でさ。はあ~……お袋も愛想を尽かすわけだよ……う~』
耳から聞こえてくる彼の声は受話器越しではあったが、息が弾んできているように聞こえた。
「どうしたの? 何だか少し辛そうだけど?」
『はあ、なんでもねえよ。ちょっと風邪でもひいたのかな、頭痛がする。はあはあ『ピー、ピー、ピー』ん、なんだ? この音は?』
受話器越しに、こもった電子音が鳴り響いた。どうやら彼の家の中で鳴っているようだ。
「何の音? 大丈夫?」
私は妙な胸騒ぎを感じ、受話器を握りなおした。
『はあはあ、おい親父! 何……音だよ、うるさ……ぜ! はあはあ、ちょっ……見てくるか……』
菅沢君は明らかに息苦しそうで、言葉も呂律が回らなくなりかけている。