学園怪談
第49話 『下校時間に……』 語り手 石田徹

 気づけば4時を回っている。私を含め、みんなの疲れも目に見えて現れてきたので、もうじき怪談も終わりなのかもしれない。
「さて、それじゃあ徹さん、お願いします」
 徹さんはイスに深々と腰をかけ、大きなあくびを一つすると、話し始めた。
「うむ。この学園に数多くの幽霊、そして怪物の類が存在するのはもう周知の事実だ。俺がこれから話す内容は学園内に現れた……というか声が木霊した、ある幽霊の話」
 
 ……。
 この学園に潜む幽霊は何も悪霊ばかりじゃない。中にはかわいそうなものだって多数存在する。これは俺の友人から聞いた話なんだが……。
「今さあ、何か聞こえなかった?」
「え? 気のせいじゃないの?」
 当時、新座学園の2年生だった神野サヤ、松伏めぐみの二人は部活動を終えて帰宅しようとしたところで、不意に何か声のようなものを聞いた。
「絶対聞こえたって、こっちからだよ」
「ちょっとサヤ! 引っ張らないでよ~」
 ショートカットの活発な女の子であり強引な性格のサヤは、親友で臆病なロングヘアーのめぐみを引きずるように、声のした方へと連れて行く。
 廊下は帰宅する生徒達の声があちらこちらから響き渡り、比較的夕方とはいえ賑やかな時間帯だ。もう10分もすれば嘘のように校舎は静まり返る事だろう。
「ほらほら、ここだよ。この辺りで確かに悲鳴のような声が聞こえたんだけど……」
 サヤは怖がるめぐみを見て半分面白がっているようだが、それでもやはり気になるのか、声がしたと思われる場所……3階の一番端の教室の廊下のつきあたりを見た。
「何もいないじゃん~。早く帰ろうよ~」
「おかしいな~、何か悲鳴を聞いたような気がしたんだけど『ひいいい』って感じの」
「きゃあ! もうやめてよね脅かすのは!」
 3階の廊下には振り返って見ても誰の姿も確認できない。もう生徒は全員帰ってしまっているようで、階下から聞こえる音が伝わってくるだけである。
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