学園怪談
 ……これは僕の後輩に直接おきた事なんだけどね。放課後、いつもどおり僕は文芸部部室で本を読んでた。そこへ1年生の村木君っていう男子生徒が来て、僕に話しかけてきた。
「あのう、石田さん……」
 村木君はその13階段の話をしてきた。実はそれまで僕自身は13階段の階段にまつわるエピソードを楽しめなかったんだよ。
 そのエピソードはなんだと思う?
 13階段はね、13日の金曜日、13歳、そして13時に階段を降りるんだ。そうすると悪魔が出てきて、13時間以内に一つだけ願いを叶えてくれるらしいんだ。
 僕がこの話を知ったのはすでに14歳になってからだったからね、試せないのが凄く残念だったよ。
「石田さん、僕、明日の13日の金曜日に13階段を降りてみようと思うんです。一緒に来て見届けてくれませんか?」
 村木君は真剣だった。普段は僕以上に大人しい彼が、凄く真剣な表情で頼むものだから、断ることなんて出来なかった。それに、見届けたいという好奇心も抑えられなかった。
 ……そして、13日の金曜日当日。この時間は給食がまだ終わっていない時間だから体育館は全く人気がなかった。
 僕達はそれぞれトイレに行くとか、保健室に行くとかっていう理由で二人で体育館の中で待ち合わせをしてたんだ。
 村木君は13時5分前に到着した僕を、弱弱しい笑顔で迎えてくれたよ。その顔は何かもの凄く張り詰めた様子で、願い事が相当に重たいものであることが窺えた。
 そして、13時になった。
「行きます」
 僕は階段の上から一段ずつ降りていく彼を見守っていたよ、一緒に段の数を数えながらね……。
 1……2……3……。
 ゆっくりと、ゆっくりとだけど、確実に彼は足を進めていった。
 ……7……8……9……。
 
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