学園怪談
第8話 『合宿所の老婆』 語り手 山﨑大介
 
 次は大ちゃんさんの2話目だ。
「さて、今度の俺の話は学園内にある合宿所にまつわるお話だよ。キミはまだ1年生だったよね。じゃあ、まだ合宿所を利用したことはないのかな?」
 私は体育館の脇にある校舎以上に老朽化の進んだ建物を思い浮かべた。
「あの木造の古臭い、今にも壊れそうな感じのやつだよ。あそこにはね、みんなで雑魚寝できるスペースが二部屋、それとトイレとあとはシャワースペースしかない。だからご飯なんかは学園の調理室を使うしかないんだ。俺ら運動部のいくつかは合宿所は年に何度か利用するからね、もうすっかり慣れたもんだけど……あそこには色々と噂がある。特にこれから話すシャワー室については、知っておかないと大変なことになる……」
 
 ……この合宿所のシャワー室は3人がそれぞれシャワーを浴びることのできるスペースしかない。それにそれぞれの入り口は外国映画とかでよくある、カーテンで仕切られているだけのものなんだ。
 夜にここでシャワーを浴びているとね、不意に誰かがシャワー室に入ってくる。でもね、その誰かは……人間じゃないんだ……俺が実際に体験した話を教えてあげる。
 まだ俺が1年生で始めて合宿所を使った時のこと。当時野球部に一緒にいた部員の中に同じ1年生の波多野っていう奴がいたんだ。こいつは身体も小さいし、野球は初心者、一体なんで野球部に自らが進んで入ってきたのかわからない奴だった。でもね、もの凄く前向きで明るい奴だったから皆からは結構好かれていた。
 ウチの野球部は強いから、合宿なんかも長めにやっているんだけど、このシャワー室には絶対に守らなければならない掟があるんだ。これは先輩から聞いた話なんだけどね。
『夜の12時過ぎにシャワーを浴びないこと。万が一シャワーを使うときは、絶対にシャワーを浴び終えるまでカーテンを開けてはいけない』
 俺達1年生全員を心配するかのように先輩達は教えてくれたんだ。もちろん顧問の先生達はしらないよ、だってアイツらは自分達だけクーラーの聞いた宿長室があるからね。ま、愚痴はともかく、皆は半信半疑だったけど夜の12時なんて時間に、まずシャワーを浴びることなんてないから特に気にしてなんていなかった。
 
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