学園怪談
「そ、そんなバカな……」
 上履きを見つめて呆然とする先輩の目に、本のページがパラパラとめくれ、表れたページには……笑顔でベンチに腰掛けて本を携えた絵山さんの姿があったらしい。
 そしてヒラヒラと何かが足元に落ちた。それは巻末についていた本の貸し出しカードだった。
 先輩はそのカードの名前を見て愕然とした。
 そこには……行方不明になった生徒達の名前が連なっていたからだ。そして、一番下の名前欄に、真新しい文字で彼女の名前が書かれていた……。

「……その後、先輩は気絶してしまい見回りに来た先生に一部始終を話したけど、当然信じてもらえるはずもなかった。いつの間にか本も消えていたらしいしね。その日から絵山さんはいなくなってしまい警察の必死の捜索も空しく絵山さんはみつからなかった。先輩は図書室の本を全て調べて回ったけれど、例の本……『禁断の書』は見つからなかった。代わりに、絵山さんを含む生徒達の999冊分の貸し出しカードが見つかっただけだった……」
 淳さんは私をまっすぐに見てニヤリと笑った。
「キミは信じられるかな? こんな話」
 そして、下を見つめて言った。
「でも絵山さんは幸せかもしれないよ、大好きな本の中に入ることができて、これからは一生本の中で暮らせるんだしね」
 そう言った彼の顔は少々不気味な感じがした。
「僕ね、怖いんだ。数えていないけど、そろそろ図書室の読んだ本の数が1000冊近いような気がして……」
 

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