学園怪談
第2話 『恐怖のバット』 語り手 山﨑大介

 次に話をしてくれるのは3年生の山崎大介さんだ。この学園で彼のことを知らない人はまずいない。高校生になったら甲子園に出場間違いナシのエースピッチャーだ。しかも4番バッター。打てば必ずホームランというくらいに強打者でもあり、既に多くの高校からもオファーが来ているらしい。先程の淳さんとは比較にならない健康的な肌の色、そして笑った顔に光る白い歯は好印象を与える。
「俺の名前は山﨑大介、大ちゃんでいいよ」
 自分でじぶんの事を大ちゃんと呼ばせるお茶目な一面もあるようだ。
「俺の話はね、野球部に関する話だよ」
 彼は唇を舐め舐め話し始めた。
「キミは運動部? それとも文化部かな?」
 私にといかけてくるが、答えは待たずに話を続けた。
「まあどっちでもいいんだけど、スポーツで汗をかくのはやっぱり気持ちがいいよね。でもね、時には歪んだスポーツマンもいるんだ……」

 ……俺の野球部には昔から引き継がれているバットがある。
 このバットはね金属製なんだけど、けっこう使い込まれている割にはへこんだり、大した傷もなくてとても長持ちしている。ある一部を除いてね……。
 バットには少しばかり黒く残るシミが着いてるんだ。このシミはどんなに洗っても絶対に落ちない。なぜなら、それは……様々な動物の血液だからね。
 昔からこのバットは『恐怖のバット』って呼ばれているんだ。変な名前だろう? 笑っちゃうよね。でもね、恐怖どころかこのバットには凄い力があるんだよ。
 このバットの最初の所有者は佐々岡っていう人だったらしい。この人はもの凄い三振王でいつも試合では三振ばかりしていたらしいんだ。
でもね、彼自身は一生懸命練習もするし、部員たちとの仲も良好で言うことなかった。そんなに一生懸命なのに野球がうまくならなかった。これはおそらく才能……あんまりいい言い方じゃないけど、彼は野球の才能がなかったのかもしれない。
ある日、佐々岡君は野球部の昔使っていた倉庫の中から古びた金属バットを見つけた。ちょうどボールを打つ辺りのところに黒いシミのあるバットだ。それが何かの動物の血液であることは分かっていた。
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