学園怪談
ここで普通に売っているさいころエンピツは濃いブラウン色で正六角形の形をしていて、それぞれア~カ 1~6、A~Fと書かれたエンピツと自分で選択肢を書き込める何も書かれていないものが2本入っている。
ある日俺が買ったセットの中に1本だけ真っ赤な色をしたエンピツが入っていた。始めは赤エンピツ入りでも出たのかと思ったけど違った。芯は他と同じく黒で、柄の色だけが赤かった。他の5本と対照的に明るい色だから凄く目立っていた1本だった。
「お、大ちゃん、さいころエンピツ買ったのか。もうじき試験だし、俺にも1本くれないかい?」
そう声をかけてきたのは、隣の席の菊田だった。菊田はサッカー部のストライカーで非常にスポーツ万能だが、勉強は嫌いのようでいつも点数が平均点の半分くらいだった。
「いいよ。じゃあ……これをあげる」
俺はそう言って例の赤エンピツを菊田にあげた。
「サンキュ! これでテストは楽勝だぜ!」
菊田は笑顔でエンピツを持って帰った。
……定期試験が終わって、菊田は全教科満点をとった。
この新座学園は生徒数の多いマンモス校のためテストは全教科マークシートという非常に珍しいテスト形式をとっている。それでも全教科満点は創立して以来、どんなに優秀な生徒でも成し遂げられていない偉業だった。
もちろん菊田に満点をとる知識があったわけじゃない。彼はほとんどの問題をさいころエンピツで解いたんだからね。先生達はカンニング行為があったんじゃないかと大騒ぎだった。でも。それからの小テストや私立の過去問題でも、菊田はマークシート問題については全て満点を取り続けた。
「お前、本当はできる男だったんだな」
「スポーツも勉強も出来て、菊田君かっこいい」
「お前はスーパーマンだ!」
周りの生徒達に尊敬の眼差しで見られて、菊田もまんざらでもないように喜んでいた。
「菊田……本当にそのさいころエンピツの力なのか?」
俺は半信半疑で菊田に尋ねた。
すると菊田の顔から笑顔が消えて、俺を睨むように言ったんだ。
「だ、だめだ! これはもう俺のもんなんだからな! 絶対に返さないぜ!」
今までの穏やかな菊田とは思えなかった。俺を見るその顔は憎悪の表情だった。
……それから菊田はテストだけでなく、私生活でもエンピツの力に頼るようになった。
ある日俺が買ったセットの中に1本だけ真っ赤な色をしたエンピツが入っていた。始めは赤エンピツ入りでも出たのかと思ったけど違った。芯は他と同じく黒で、柄の色だけが赤かった。他の5本と対照的に明るい色だから凄く目立っていた1本だった。
「お、大ちゃん、さいころエンピツ買ったのか。もうじき試験だし、俺にも1本くれないかい?」
そう声をかけてきたのは、隣の席の菊田だった。菊田はサッカー部のストライカーで非常にスポーツ万能だが、勉強は嫌いのようでいつも点数が平均点の半分くらいだった。
「いいよ。じゃあ……これをあげる」
俺はそう言って例の赤エンピツを菊田にあげた。
「サンキュ! これでテストは楽勝だぜ!」
菊田は笑顔でエンピツを持って帰った。
……定期試験が終わって、菊田は全教科満点をとった。
この新座学園は生徒数の多いマンモス校のためテストは全教科マークシートという非常に珍しいテスト形式をとっている。それでも全教科満点は創立して以来、どんなに優秀な生徒でも成し遂げられていない偉業だった。
もちろん菊田に満点をとる知識があったわけじゃない。彼はほとんどの問題をさいころエンピツで解いたんだからね。先生達はカンニング行為があったんじゃないかと大騒ぎだった。でも。それからの小テストや私立の過去問題でも、菊田はマークシート問題については全て満点を取り続けた。
「お前、本当はできる男だったんだな」
「スポーツも勉強も出来て、菊田君かっこいい」
「お前はスーパーマンだ!」
周りの生徒達に尊敬の眼差しで見られて、菊田もまんざらでもないように喜んでいた。
「菊田……本当にそのさいころエンピツの力なのか?」
俺は半信半疑で菊田に尋ねた。
すると菊田の顔から笑顔が消えて、俺を睨むように言ったんだ。
「だ、だめだ! これはもう俺のもんなんだからな! 絶対に返さないぜ!」
今までの穏やかな菊田とは思えなかった。俺を見るその顔は憎悪の表情だった。
……それから菊田はテストだけでなく、私生活でもエンピツの力に頼るようになった。