学園怪談
でも、私はなぜか日記を見て物悲しい気分になってしまった。それはこの時だけではなく、自分の書く時に、この綺麗な字を見返す度にそんな気分になってしまう。いったい誰の文字なんだろう? そんな事を思いながらも確かめずに時は過ぎていった。
『ペンネーム うさちゃん ……もうすぐ、体育祭だね。私はやっぱり陸上部だし、短距離走に出たいと思うんだけどね~。みんなは何に出たい?』
『そうだな~、面倒くさいし、玉入れだけでいいや私』
『ペンネーム ラブリー ……やっぱアベックリレーでしょ、私は岡野君と一緒に出たいいいい!』
 いつもどおりの他愛もない文章の中に、その綺麗な字の子もコメントしていた。
『☆私は体が弱いからどうかな……本当はみんなと一緒に色々と競技にも参加したいんだけどね☆』
 あれ、私たち7人の中に体の弱い子なんていただろうか? 私はそんな疑問を抱いたものの、たまたま体調でも悪いのか、持病でもあるのかもしれないと思い、あまり深く突っ込まずに『体、丈夫になるといいね』とだけ書いた。
 他のみんなからも……。
『ペンネーム もも ……具合悪いの? お大事にね!』
『そうだよ~、この時期の風邪は性質が悪いからね、気をつけないと』
『風邪だったらいい滋養料理の作り方を知ってるよ! この間、お婆ちゃんに教えてもらったんだ~。作り方はね……』
 と、いうような暖かいメッセージも書かれた。
『☆ありがとう、みんな。私はいい友達を持って幸せだな~☆』
 日記では成績とか彼氏とかの悩みも相談されて、みんな普段は恥ずかしくて言えないようなことも書いていた。
やっぱり顔を見てじゃないから安心して相談できるんだね。私も色んな相談を日記に書いた。落ち込んでいた時なんかも、みんなからのアドバイスや励ましの言葉なんかをもらって、いっぱい、いっぱい元気になった。
< 69 / 235 >

この作品をシェア

pagetop