学園怪談
学園側も原因がわからないまま再度の工事費用を出すわけにもいかず、しばらくはバケツで雨漏りを受けることになった。
「ねえねえ、あの教室の雨漏りさ、だんだん量が増えてない?」
「なんでも雨の日以外にも雨漏りし始めたって」
「4組の田口が放課後に誰かがすすり泣くような声を聞いたってよ」
 口内では様々な噂が飛び交い、PTAからも抗議の声が上がった。
 学園長先生も欠陥工事だったのではないかと、業者に何度も確認をとったけれど、業者側は有り得ないという一点張りで聞き入れなかった。
 そして半年もの期間が経つうちに、雨漏りは異常な量に達した。絶えずポタポタと水が流れ落ちるようになり、バケツの水も1時間も経たないうちに一杯になってしまうのだ。
 ついには学園側も業を煮やし、別の業者に頼んで再工事をお願いした。その時になって、以前工事を行った山川工業の社長が、もの凄い剣幕で学園に直訴にきた。
「あの教室の再工事はウチがやります」
「いや、しかしもう別の業者に委託してありますので、お宅にはお願い出来ません」
「勝手に他の業者を入れてもらっては困る。あの教室の担当はウチです!」
 もう別の業者にも頼んでしまった手前、断るわけにもいかなかったが、その社長は新しい業者への和解金も負担して、半ば強引に工事を執り行ってしまった。
 ……それから、工事は間もなく終わったように思えた。しかし、天井の工事は終わっているはずなのに、工事終了の報告がない。それどころか、その山川工業の社長が工事の終わった日から行方不明になっていることが分かった。
 そして……。
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