学園怪談
「でも何でこんな天井なんかに二人が?」
 斎条さんの言葉だ。
「うん、警察の発表では愛人を殺して死体の処理に困った社長は、焼いて骨だけの状態にして、天井に一緒に塗りこめたらしいんだ。だから、別の業者に任せるのだけは避けたかったんだね。死体の処理っていうのは本当に大変らしいからね、警察もまさか学校の天井なんかに仏さんがいるとは予想もしなかったんだろうよ」
 私は天井を見ながら言った。
「じゃあ、その雨漏りっていうのは……」
「彼女の無念の涙だったのかも知れないね。こんな所で一人放置されて……かわいそうに」
 私は工事跡の残る天井を見つめたまま、この学園の不思議な話はいったいどれだけ存在するのか怖くなった。話を聞けば聞く程、もうそこらじゅう何かしらの事件や事故だらけだ。
「ちょっとトイレに行ってきます。誰か……行きませんか?」
 私は急に催してきてしまったので、少し休憩を入れるがてら、トイレにみんなを誘った。
「あ、アタシ行く~」
「わ、私も」
「俺もいっとこうかな。淳、どうするよ」
「じゃあ、僕も行くよ」
 赤羽先生、斎条さん、石田兄弟の4人が私の誘いに乗ってきた。
よかった、これだけ人数がいれば怖くない。
 まだまだ、夜の怪談は続きそうだ。ここらで一休みしなくては体がもたない……。
 しかし、このトイレツアーが、また新たな怪談を生み出してしまう事を、この時の私はもちろん、みんなも予想していなかった。


< 76 / 235 >

この作品をシェア

pagetop