学園怪談
第18話 『トイレツアー』 語り手 私

 この教室から一番近いトイレは1階、東側のトイレだ。この学園のトイレは一つの階に3箇所で、東側と西側、そして特別室のある棟にそれぞれ設置されている。能勢さんの話していた『花子さん』の棟とは違うので、ここなら夜でも安心なはずだ。
 みんなで廊下を歩く。赤羽先生、斎条さん、石田兄弟。これだけの人数がいれば、不気味な廊下を歩くのも怖いどころか、かえってワクワクしてきてしまう。やはり夜の学園で怪談を続けるという行為は、少しずつだが体に恐怖を植えつけてしまっているようだった。
「じゃあ、みなさん。用が済んでも外で待っててください。みんな一緒に帰りましょう」
「あはは、あなた怖いの?」
 赤羽先生がいたずらっ子のような笑みで言う。
「ち、違いますよ。ただ、みんなで来たのにバラバラに帰ると、教室に残った人達が心配するかと思って……」
「はいはい、そういうことにしておきましょうね」
 赤羽先生と斎条さんは軽やかに女子トイレの入り口ドアを押し開けた。
「さて、手早く済ませようぜ~」
 徹さんと淳さんも男子トイレに入る。
 私は最後にドアを開けてトイレに入った。
 しかし、一番最初にトイレを出てきたのは私だった。廊下には誰もいない。反対側のトイレからはまだ、誰も出てきていないようだ。
 2番目にトイレから出てきたのは徹さんだった。
「あれ、まだキミだけか。女のトイレは長いな~」
 直ぐに淳さんが出てきて、次に斎条さんが女子トイレから出てきた。しかし、赤羽先生だけがまだ出てこない。
「大人の女性は長いね、こんな夜に化粧直しとかしてる訳ないよな」
 徹さんが疲れたように喋る。
「まあまあ、もう少し待ってあげてくださいよ」
 斎条さんがなだめるように言う。
 それから5分程経っただろうか、まだ赤羽先生は出てこない。
「いくらなんでも遅いんじゃないか? まさか大か?」
「い、いえ。しょ……小だって……言ってましたけど」
 少しばかり赤くなりながら斎条さんが答えた。
 それからさらに3分くらい経った。
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