学園怪談
……。
「でも、なんで妙子さんが対象になったんですか?」
「住職さんの話では、妙子さんは最近、誰かに酷く恨まれたり憎まれたりする事があったのではないかと言っていました。もしかしたら、事件のちょっと前に、妙子に交際を申しこんで断られた栗山君あたりかもしれません」
「それで彼がひどく妙子さんを憎んだために言霊が便乗したということか……」
 私と斎条さんの会話に、能勢さんは腕組みをして納得をしたようにうなずく。
 言霊……そんなこともあるのだろうか。この世の中は酷く汚い、マイナス要素を含んだ言葉が溢れている。このまま我々が酷い言葉を使い続ければ、また妙子さんのように言霊の犠牲者が出てしまうのかもしれない……私はそんな事を考えていた。
 だったら……、だったら、素敵な言葉の言霊も作るように努力すればいいじゃないか! 私はそう考えると、少し希望が見えてきた気がした。
「さ、次は徹の番だよ、早く始めて」
 紫乃さんは徹さんの膝を叩いて先を促した。
「よろしくお願いしますとか言ってもいいんじゃないか?」
「バカ! 早く始めなさいよ。まったくノロマなんだから」
「なんだよ、偉そうに、このブス」
「デブ」
「へーんだ、死ね死ね! 可愛くね~の」
 前言撤回。簡単には良い言霊は産まれそうもありません……。
 私はため息を大きくついた。

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