学園怪談
「は~、もっと街灯を増やせばいいのに」
 そんな文句を独り言としてつぶやく俺だったが、急に携帯電話が鳴った。
「おおっと、誰だ?」
 着信パネルを見るが、非通知設定になっているために誰か分からなかった。
 でも友達の誰かだろうと思い、とりあえず出てみた。
「はい、もしもし?」
「私メリーさん。今、あなたの家の1階にいるの……」
 ガチャ、ツー、ツー、ツー。
「相手は間髪いれずにそれだけ喋って、一方的に電話を切った」
 いきなりの電話に困惑した俺だったが、きっと何かのいたずらに違いない、あるいは間違い電話だろうと思い、気にしない事にした。
 それからしばらく歩いたところで、再び電話が鳴った。
「ち、また非通知かよ」
 また間違い電話かと思い、今度は文句言ってやろうと思って電話に出た。
「あのさ、誰にかけてるわけ?」
「私メリーさん。今、あなたの家の2階にいるの……」
 そして、また俺の言葉は無視された。ここで俺は、かつて聞いた事のあるメリーさんの話を思い出さずにはいられなかった。でも、俺は今、部屋の外にいる。家には誰かいるかもしれないが、俺に電話をしてくる意図が全く分からなかった。少しばかり心臓の鼓動が早まるのを感じながらも、俺は家路を急いだ。
 しばらくして、また携帯が鳴った。
「……はい」
「私メリーさん。今、あなたの家の3階にいるの……」
 やはりメリーさんからの電話だった。
 俺は携帯を握る手が、知らないうちに汗ばんでいたことに気がつき、慌ててズボンで手を拭った。
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