学園怪談
 普通すぎる程、普通の会話だった。結局あれはいたずらか間違い電話だったのだ。俺はそう決め付けて、エレベーターホールへの入り口まで来た……その時、携帯が鳴った。
「……まじかよ」
 携帯の表示は非通知だった。
「……も……もし……もし」
 俺は恐る恐る震える指で通話ボタンを押すと、搾り出すように声を出した。
「私メリーさん。今、あなたの……後ろ!」
 俺は慌てて振り向いた! 
 しかし、そこには誰もいなかった。
「な、なんだよ、誰もいないじゃないかよ」
 ドシャアア!
 その時、安堵のため息をついた俺の目の前に何かが勢いよく落ちてきた。それは……たった今、屋上から飛び降り自殺をした女性だった。
「あ、あああ、あああああ!」
 俺は腰を抜かして目の前の光景を見ていたよ。目の前で一人の女性が頭から大量の血を流している姿と、その手に握られた携帯電話をね……。

 ……。
「結局、その女の人の携帯から俺にかけられた訳じゃなかったみたいだ。それに俺も知らない人だったしね」
 徹さんにしてはまともな怖い話だった。学園についての話じゃなかったことだけを除けば十分すぎるネタだった。
「ありがとうございました。じゃあ次に行きたいと思います」
 また何か徹さんが脱線しないうちに、私は順番を先に進めることにした。

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