学園怪談
彼の言葉に、僕は半信半疑だった。だってこんな話を信じろって方が無理な相談だよね。SF映画じゃあるまいし、時を戻すことが出来るなんて、あるわけがない。
「じゃあ、ためしに何か実験してみてくれよ」
「OK。いいよ。それじゃあ、紙に何かで数字を書いてくれよ。いくつでもいいよ、0から~1万くらいまでの間でどうぞ」
 僕は紙とペンを取り出して、彼に見えないように『5579』とだけ書いた。
「書いたよ、じゃあどうするの?」
「もう分かってるよ。『5579』だろう?」
 一瞬、空気が止まったかのように感じたのは気のせいだったのだろうか? 彼は最初から分かっていたかのように数字を言い当てた。
「な、なんで、分かったの?」
「たった今、俺はカードの力を使ったんだよ。未来でカードの番号を無理やり見て、過去である今に時間を戻したわけ」
 彼のカードにはいつのまにか1分前と書き込まれていた。さっきまでは確かに空白だったはずだ。
「これで分かったでしょ。他のみんなには何の影響もなくて、僕だけが未来の記憶を持ち帰ることが出来る。凄いよこのカード、これさえあれば、俺は何度でも失敗をやり直せる! 油性ペンを消せる消しゴムも買ったから何度でも使えるしね」
 小久保君は誰かにカードの力を自慢したくてしょうがなかったのかもしれないね、僕はカードのことは誰にも言うつもりはなかった。誰も信じないだろうし、それに時を戻る力っていうのも、自然の摂理を曲げているようで怖かったしね。
 でもね、それからしばらくして、にわかに信じ難かったそのカードが、本当に時間を戻せる力があることを認めないわけにはいかなくなった。
「じゃあ、この文章の訳を……小久保」
 英語の授業で小久保君がさされたときのことだ。彼は英語が大の苦手で、アルファベットすらも全て書けないくらいだった。そんな彼が……。
「これはですね。ジェーンは買い物をするために、デパートに行った……です」
「おお~」
 という、クラスからの驚きの声が上がった。
「や、やれば出来るじゃないか小久保!」
 先生も彼を褒めた。
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