学園怪談
そして、彼は僕を見てニヤリと笑った。
「使ったの?」
「うん、そう。一番英語の得意な和久井の解答を見てから戻ってきた」
彼は事も無げに言うと、例のカードを取り出して僕に笑いかけた。
……それからの彼は何でも出来るスーパーマンだった。勉強はトップレベルにできるようになったし、数字当てのミニ宝くじで1等賞を連発してとったりしたのだ。すっかり学園の人気者になった。
しかし……。
林間学校で事件は起こった。小久保君と何人かの友人は夕食後、部屋で賭けトランプをして遊んでいた。小久保君は例のカードを使い、5秒前に戻っては連戦連勝を繰り返していた。
……その夜、彼らは無断で宿を抜け出して崖へ肝試しにいったんだ。……そして、小久保君は足元が見えなかったのか、運悪く崖から数百メートルも落ちて下の岩肌に叩き付けられて即死した。
……。
話を切ると、淳さんは手で顔を覆って、ブルブルと震え出した。
「この話を聞いて、僕は凄く恐ろしく感じたよ。なぜだか分かるかい?」
淳さんの問いかけに私は考えた。
確かに暗闇の中、数百メートルの落下は怖いに違いない。でも、なぜ淳さんが必要以上に怯えるのかまでは分からなかった。
「彼は片時もあのカードを離さなかった。死んだ彼のズボンのポケットから、例のカードが出てきたらしい。『5秒前』と書かれたあのカードがね」
そこまで聞いて、私の頭の中にも淳さんの恐怖の意味が理解できた。
小久保さんは数百メートル落下し、地面に叩きつけられて即死した。そう、『強く打ち付けられて』……そして、カードの効力によって5秒前に戻る。空中に戻された彼は再び地面に叩きつけられて死ぬ。またカードの力で戻る。また死ぬ。戻る。死ぬ……。
小久保君はもういない、でも今でも彼は5秒置きに死に続けている。永遠に、死にたくても死にたくても永久的にループして死に続けるのだ。何十回、何百回、何万回と死んでも……。これほど残酷で恐ろしい現実が他にあるのだろうか?
私は震えながらも口元が笑っている淳さんに恐怖を感じていた……。
「使ったの?」
「うん、そう。一番英語の得意な和久井の解答を見てから戻ってきた」
彼は事も無げに言うと、例のカードを取り出して僕に笑いかけた。
……それからの彼は何でも出来るスーパーマンだった。勉強はトップレベルにできるようになったし、数字当てのミニ宝くじで1等賞を連発してとったりしたのだ。すっかり学園の人気者になった。
しかし……。
林間学校で事件は起こった。小久保君と何人かの友人は夕食後、部屋で賭けトランプをして遊んでいた。小久保君は例のカードを使い、5秒前に戻っては連戦連勝を繰り返していた。
……その夜、彼らは無断で宿を抜け出して崖へ肝試しにいったんだ。……そして、小久保君は足元が見えなかったのか、運悪く崖から数百メートルも落ちて下の岩肌に叩き付けられて即死した。
……。
話を切ると、淳さんは手で顔を覆って、ブルブルと震え出した。
「この話を聞いて、僕は凄く恐ろしく感じたよ。なぜだか分かるかい?」
淳さんの問いかけに私は考えた。
確かに暗闇の中、数百メートルの落下は怖いに違いない。でも、なぜ淳さんが必要以上に怯えるのかまでは分からなかった。
「彼は片時もあのカードを離さなかった。死んだ彼のズボンのポケットから、例のカードが出てきたらしい。『5秒前』と書かれたあのカードがね」
そこまで聞いて、私の頭の中にも淳さんの恐怖の意味が理解できた。
小久保さんは数百メートル落下し、地面に叩きつけられて即死した。そう、『強く打ち付けられて』……そして、カードの効力によって5秒前に戻る。空中に戻された彼は再び地面に叩きつけられて死ぬ。またカードの力で戻る。また死ぬ。戻る。死ぬ……。
小久保君はもういない、でも今でも彼は5秒置きに死に続けている。永遠に、死にたくても死にたくても永久的にループして死に続けるのだ。何十回、何百回、何万回と死んでも……。これほど残酷で恐ろしい現実が他にあるのだろうか?
私は震えながらも口元が笑っている淳さんに恐怖を感じていた……。