学園怪談
 志村は皮膚科に通って医者に見せたが、医者は何かの虫に触ってかぶれたのだろうと診断し、かゆみ止めの塗り薬を処方するだけに終わった。
 そして、それから1週間が経った日の朝、そのミミズ腫れは彼の腕から完全に消えうせた。前日までの自分が嘘のように思え、楽になった腕をさすりながら彼は洗面台の前で顔を洗っていた。
「きゃああ!」
 その時、彼の妹の部屋で悲鳴が上がった。
「ど、どうした美佐!」
 志村はただごとではない悲鳴に、全力で妹の部屋に向かった。
「お、お兄ちゃん……」
 着替えの途中だったのか、妹の美佐は上半身が下着姿のままで半べそをかいて固まっていた。
 見ると、彼女の腕には昨夜寝る前まで志村にあったはずのミミズ腫れが、全て同じ箇所に浮き出ていた。
「そんな、俺のが伝染ったのか?」
 志村は昨夜の出来事を思い出していた。
 昨夜寝る前、ミミズ腫れをからかう妹に『お前に伝染してやる!』と冗談半分に擦りすけたのだ。その結果、朝には妹にミミズ腫れが全て移動していた。
「助けてお兄ちゃん!」
 泣きながら懇願する妹がいたたまれなくなり、志村は再び腕を擦り合わせ、翌日の朝にミミズ腫れを全て伝染し返させた。
「これでいい、俺が何としてもコイツを治してみせる」
< 92 / 235 >

この作品をシェア

pagetop