学園怪談
志村はその後も皮膚科に通い、様々な薬を試したり、手術したりもしてみた。しかし、手術などで切り取っても、次の日には元通りに一本オマケまでついて浮き出てくる。
 右腕いっぱいにミミズ腫れが出来上がった頃、次いで左腕が蝕まれ始めた。そして、日に日に痒みは酷くなり、掻き毟って血が滲んだ痕はあまりにも無残な姿だった。
「だめだ……もう我慢できない!」
 両腕の皮膚全てがミミズ腫れで埋め尽くされた頃、志村はついにこの病気を他人に伝染した……。
 それからの学園内は大パニックだった。日に日にアチコチの生徒が騒ぎ始め、腕はおろか足にも浮き出始めたミミズ腫れの恐怖と痒みに襲われる毎日だった。その病気は1ヶ月ほど学園内を転々と回った後、誰かがよその生徒に伝染したらしく、学園内から消えた。
 ……それから5年の月日が流れて、伝染病のことなどすっかり忘れた志村は大学生になっていた。彼女もできて平凡ながらも毎日を満喫していた。
……そんなある日、いつものように大学の最寄りの駅で待っていた志村の前に、彼女は現れなかった。
「どうしたんだアイツ」
風邪でも引いたのかと思い、公衆電話から連絡をとってみたが、彼女は電話に出ず、彼女の母親づてに「今は会えない」という言葉だけを言われ、一方的に切られた。心配して家にも訪ねると、伝染病にかかってしまい、部屋に閉じこもってしまっているとの事だった。
「伝染病……!」
志村の頭に過去の忌まわしい記憶が甦ってきた。
「まさか……でも、もしかしたら……」
 病状を母親に尋ねたところ、症状も一致していた。志村は確信し、強引に彼女の部屋に上がりこむと、嫌がる彼女の布団を力ずくで剥ぎ取った。
 ……!
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