君が生きていれば、それだけで良かった。

 びっくりしたのも束の間、男の背後にこちらへやってくる警備員のおじさんたちの姿が見えた。私は彼の腕を掴んだまま、病院の外へ引っ張っていく。

「な、なに、なんで おおおお俺の手を!? えっ嘘っこれ、ど、ドッキリとか!?」

 警備員に追われているというのに、彼はのんきに私の腕を引かれているだけだ。

 私はそのまま病院の入り口まで向かおうとして、玄関ホールのそばにカメラやスマホ、レコーダーを持った人たちが集まっていることに気付いた。

「撮影? あっ、今日あかりちゃん、病院で撮影しているの? あ! 新しいドラマとか!? なら俺、ちゃんと黙ってます!」
「違います」

 炎上のせいで仕事は全部キャンセルだ。

 それに撮影なら、化粧道具を抱えたメイクスタッフや、レフ板を動かす照明スタッフもいるはずだ。カメラ片手になんてことはない。
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