君が生きていれば、それだけで良かった。

 平然と私に縋るように言葉を紡いで、中庭の注目を一身に浴びている。

 夕光が奇跡的に彼を照らしているせいで、さながらスポットライトのようだ。

 ただ逆光になっているせいか、不気味さまで醸し出している。

 言い辛いけど仕方ない。

 意を決して、首を横に振った。

「私、死んだの。暫定幽霊なの、貴方にしか私の姿は見えてない」
「そんな……」

 先ほどまでキラキラ輝いていた彼の瞳が、すうっと冷えて鈍く見える。

 私は手のひらを握りしめ、声にも力を籠めた。

「スマホ見て。たぶんもう、ニュースとかになってるから」

 彼は虚脱状態だったのが嘘みたいに、俊敏にスマホをポケットから取り出し、私の名前を打ち込んだ。焦燥にかられた視線が一身に注がれる画面を、私ものぞき込む。
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