君が生きていれば、それだけで良かった。

 返事をする前に、「親が車で迎えに来るはずなんで!」と彼はそのまま私を引っ張りだした。

「いや……な、ど、どうして……?」
「だって肝試しで怨霊が出てくる病院とかあるじゃないですか。危ないですよ」
「危ないもなにも死んでるから……」
「まだ生きてます! 国宝をそんな病院に野ざらしになんてできません。意識が戻るまで、保護させてください」
「国宝って……」
「とにかく一緒に来てください!」

 彼はぐんぐん私の腕を引いていく。
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