君が生きていれば、それだけで良かった。

 かと思えば立ち止まって、ぐるりとこちらに振り向いた。

「僕、縁川天晴(えんがわあまはる)っていいます! 天晴(あまはる)って呼んでくれませんか?」
縁川(えんがわ)さん……?」
「ありがとうございます!」

 注文とは異なるのに、彼は笑みを浮かべる。腕を掴んでくる力は、色白で線が細いわりに確かな力だった。

< 34 / 73 >

この作品をシェア

pagetop