君が生きていれば、それだけで良かった。

「うち、お寺なんだ。だからだと思う。あかりちゃんが見えるの」

 淡々とした声音で囁かれ、さっと前へ飛びのく。さっきまで私が立っていた真後ろに、縁川天晴(えんがわあまはる)がいた。

「び、びっくりした……」

「でもほら、俺しか見えないわけだし……」

「耳元で言う必要はなかった」

「でも……小さい声がいいかと」

 縁川天晴は納得いかない様子だけど、さっき完全に二の腕同士がぶつかっていた。
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