君が生きていれば、それだけで良かった。
「お父さんのお弟子さんが寝泊まりしてるんだ。俺もお兄ちゃんもお寺継がないからさ、あそこで寝てる誰かが、このお寺継ぐんですよ」
家がお寺で居住区が墓地に囲まれている。
初めて彼と出会ったとき線香の匂いが強かったから、幽霊だと誤解したのか。これだけ墓が並んでいたら、嫌でも線香の香りなんてつくだろうに。
「お寺、継がないんだ」
「はい! 僕は一生をかけて、あかりちゃんを推していきますから! 住職もいいですけど、俺が心も身も捧げるのはあかりちゃんなので」