彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
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「婚約おめでとう~」」
「おめでとう~」
「かんぱーい」
稔先輩に言った通り、弥生と萌絵とちょっとおしゃれな居酒屋の半個室で女子会だ。
弥生と萌絵相手に稔先輩にプロポーズされたことの報告会、というか祝勝会。
「それにしても里美の粘り勝ちね」
「そうだよ。大学で一目惚れして彼を狙って同じ会社に入って・・・って凄い執念。まさか本当に堕とすとは思わなかったわ」
「ふふふ。まあね」
私は今、幸せの絶頂にいる。
料理に舌鼓をうち、アルコールもすすむ。
「この魚のソテー美味しいわ。弥生ももっと食べたら?」
「ううん、ちょっとまだパクチーの臭いがだめ。だいぶおさまってるんだけど」
弥生が口元を手で押さえて顔を背けた。
「つわりがおさまってないのに呼び出してごめんねー」
「いいの。私も外出できなくて腐ってたし、今日は里美のお祝いじゃない。私が協力したおかげでもあるわけでしょう」
弥生はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「その節はどーもお世話になりました。あれ役に立ったわ。あれがとどめだったみたい」
私も微笑み返すと萌絵が「あれって何?何?」と興味津々で話に入ってきた。
「妊娠検査薬よ」
「え、まさか里美も妊娠?」
「違うわよ。妊婦は私だけ」弥生が少し膨らんだお腹をさする。
「でも、妊娠検査薬だなんて」
「まぁまぁ、萌絵ったらいいじゃないそんなこと。今日はお祝いなんだから」
さあ食べて、とエビのアヒージョのお皿を差し出すと、萌絵は納得していないような顔をしている。
「里美、まさかとは思うけど・・・」
「あー聞きたくなーい」
耳を塞いであーあーと声を出してやると、萌絵の顔が厳しくなった。
「あんた、やったわね」
「何のこと」
とぼけてナッツをぽいと口に放りこんだ。
「弥生、あんたも何でそんな馬鹿なことに協力したのよ」
「だって里美にちょっと協力してって言われて面白そうだなって思って。ちょうどつわりがひどくてストレスが溜まってたし」
萌絵の追求に弥生はあっさりと口を割ってしまった。
まぁ萌絵相手だからいいっか。
「妊娠したなんて嘘ついてもすぐにバレるのよ。どうするつもりなの」
「あれから何回かヤッてるからホントに妊娠してるかもしれないし、もしデキてなかったら流れたことにしようかなって」
「はあ!?いったい何考えてんの」
萌絵の眉がつり上がった。
「妊娠したって嘘ついたってことでしょ。大学の先輩の彼氏奪っただけじゃなく急いで結婚しておまけに後で妊娠は嘘でしたーなんて。他人の人生なんだと思ってるの」
「かたいこと言わないでよ。いいじゃない、先輩達は壊れかかってたんだし。なんだかんだ言ったって稔先輩は私を選んだんだよ。だったら私が稔先輩と結婚したっていいでしょ」
「それだって里美が稔さんに元カノさんの事実無根の悪口を吹き込んでいたんでしょ。稔さんに隠れて社内のエリート達と合コンして条件のいい結婚相手探してるとか、あることないこと言って」
萌絵の責めるような口調に私もイラッとする。
「事実無根かどうかはわからないじゃない。きっとやってるわよ、エリートと合コン。あっちは天下のアクロスコーポレーションなのよ。ウチとはレベルが違うわ。稔先輩だって自分より彼女の方がいい会社に入ってプライド刺激されて嫌気がさしてたんだから」
「そうやってつけ込んでいったんだ。・・・里美、あんた、そんなんで幸せになれると思ってるの」
「最終的に手に入れたもの勝ちよ」
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いてよ」
弥生が泣きそうな声を出してやっと萌絵は黙った。ふんっと息を吐いてピーチサワーを一気飲みしている。
「婚約おめでとう~」」
「おめでとう~」
「かんぱーい」
稔先輩に言った通り、弥生と萌絵とちょっとおしゃれな居酒屋の半個室で女子会だ。
弥生と萌絵相手に稔先輩にプロポーズされたことの報告会、というか祝勝会。
「それにしても里美の粘り勝ちね」
「そうだよ。大学で一目惚れして彼を狙って同じ会社に入って・・・って凄い執念。まさか本当に堕とすとは思わなかったわ」
「ふふふ。まあね」
私は今、幸せの絶頂にいる。
料理に舌鼓をうち、アルコールもすすむ。
「この魚のソテー美味しいわ。弥生ももっと食べたら?」
「ううん、ちょっとまだパクチーの臭いがだめ。だいぶおさまってるんだけど」
弥生が口元を手で押さえて顔を背けた。
「つわりがおさまってないのに呼び出してごめんねー」
「いいの。私も外出できなくて腐ってたし、今日は里美のお祝いじゃない。私が協力したおかげでもあるわけでしょう」
弥生はにやりと不敵な笑みを浮かべた。
「その節はどーもお世話になりました。あれ役に立ったわ。あれがとどめだったみたい」
私も微笑み返すと萌絵が「あれって何?何?」と興味津々で話に入ってきた。
「妊娠検査薬よ」
「え、まさか里美も妊娠?」
「違うわよ。妊婦は私だけ」弥生が少し膨らんだお腹をさする。
「でも、妊娠検査薬だなんて」
「まぁまぁ、萌絵ったらいいじゃないそんなこと。今日はお祝いなんだから」
さあ食べて、とエビのアヒージョのお皿を差し出すと、萌絵は納得していないような顔をしている。
「里美、まさかとは思うけど・・・」
「あー聞きたくなーい」
耳を塞いであーあーと声を出してやると、萌絵の顔が厳しくなった。
「あんた、やったわね」
「何のこと」
とぼけてナッツをぽいと口に放りこんだ。
「弥生、あんたも何でそんな馬鹿なことに協力したのよ」
「だって里美にちょっと協力してって言われて面白そうだなって思って。ちょうどつわりがひどくてストレスが溜まってたし」
萌絵の追求に弥生はあっさりと口を割ってしまった。
まぁ萌絵相手だからいいっか。
「妊娠したなんて嘘ついてもすぐにバレるのよ。どうするつもりなの」
「あれから何回かヤッてるからホントに妊娠してるかもしれないし、もしデキてなかったら流れたことにしようかなって」
「はあ!?いったい何考えてんの」
萌絵の眉がつり上がった。
「妊娠したって嘘ついたってことでしょ。大学の先輩の彼氏奪っただけじゃなく急いで結婚しておまけに後で妊娠は嘘でしたーなんて。他人の人生なんだと思ってるの」
「かたいこと言わないでよ。いいじゃない、先輩達は壊れかかってたんだし。なんだかんだ言ったって稔先輩は私を選んだんだよ。だったら私が稔先輩と結婚したっていいでしょ」
「それだって里美が稔さんに元カノさんの事実無根の悪口を吹き込んでいたんでしょ。稔さんに隠れて社内のエリート達と合コンして条件のいい結婚相手探してるとか、あることないこと言って」
萌絵の責めるような口調に私もイラッとする。
「事実無根かどうかはわからないじゃない。きっとやってるわよ、エリートと合コン。あっちは天下のアクロスコーポレーションなのよ。ウチとはレベルが違うわ。稔先輩だって自分より彼女の方がいい会社に入ってプライド刺激されて嫌気がさしてたんだから」
「そうやってつけ込んでいったんだ。・・・里美、あんた、そんなんで幸せになれると思ってるの」
「最終的に手に入れたもの勝ちよ」
「ちょ、ちょっと二人とも落ち着いてよ」
弥生が泣きそうな声を出してやっと萌絵は黙った。ふんっと息を吐いてピーチサワーを一気飲みしている。