彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
「・・・そもそもやることやらなきゃ妊娠検査薬なんて手は使えなかったのよ」
向こうが私に手を出さなかったらこの作戦は使えなかったのだ。
二人が別れたのは私だけのせいじゃない。

「それだって里美が酔い潰して稔さんをお持ち帰りしたからじゃない」

「なんとでも言って。もうプロポーズしてもらったし、週末には指輪を買いに行くの。この勝負は私の勝ち」

興奮して喉が渇いた。レモンサワーをごくごくと飲みこんで
おかわりを頼もうと手を上げたとき、目の前に大きな影が。

「ーーー里美」

聞き覚えのある声に顔を上げて・・・凍りついた。

稔センパイーーーどうしてここに。


「今の話、本当か」
彼の顔は赤黒くなっている。
おそらく全部聞かれていた。

「きょ、今日は出張で泊まりじゃなかったんですか」

「商談相手のあちらの部長さんがね、婚約者さんが妊娠初期なら夜遊びはさせないで早く連れ帰った方がいいと言ってくれてね。商談を早々にまとめてくれて帰りの新幹線の指定席までとってくれたんだ。急いで帰ってきて里美を迎えに来たんだけど・・・俺は一人で帰るから君は好きなだけ飲んでいけばいい」

稔先輩はくるりと背を向けた。

「センパイ!」
立ち上がって歩き出した彼の腕をつかもうとしたら振り払われた。

「しばらく俺の部屋には来ないで欲しい。週末の予定もキャンセルしよう」

私を見下ろす彼の目はぞっとするほど冷ややかで、声を出すことが出来なかったーーー





collapse of ploy 里美


  終わり
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