彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
気がついたら目の前からとっくに二人はいなくなっていて、今日受付を担当したメンバーと共に会場の外で薔薇姫の親友の谷口さんからホテルのロゴの付いた紙袋を渡されていた。
「今日はどうもありがとうございました。休日出勤ですのできちんと手当は出しますと社長からの伝言です。それと、いまお配りしたのは新婦の高橋さんから皆様への感謝の贈り物です。私はこの後もまだ残らなくてはなりませんが、皆さんは自由に解散してください。まだパーティーは続いていますし、せっかくですからゆっくりお料理やアルコールを楽しんで欲しいと新郎新婦からの伝言です」
谷口さんは再度、私たちに会釈をして会場内にと足早に戻っていった。副社長の婚約者でもある彼女もまた挨拶回りなどで忙しいのだろう。来年には自身の結婚式も控えている。
「ね、見て。これすごいわ」
紙袋の中身をのぞいていた同僚が驚きの声を上げた。
15センチ程度の箱と8センチ程度の箱が二つ。それと何かのカード。
「ええ、これあの『カフェ・ラ・ガゾン』のケーキじゃない。あのお店、テイクアウトはやってないはずじゃないの」
「こっちの箱には素敵なバッグチャームが入ってるわ」
「最上階のスカイカフェのティーチケットまで」
息を呑むほどの中身。
たかが仕事の一環で受付業務をしただけの私たちには過分の配慮じゃないんだろうか。
谷口さんの言うとおりならこれを準備したのは薔薇姫ってことになるけれど。
「流石は高橋先輩だね」
いつの間にか竜が私の隣に立っていた。
竜は同僚達が薔薇姫からの贈り物を褒め立てる姿を見て目尻を緩ませている。
自分のことのように喜んでいるらしい。
私は否定するのも馬鹿馬鹿しくなって黙って頷いた。
確かに素晴らしい。
そしてこれは間違いなく薔薇姫が自分のコネクションを使って準備したものだろうと確信した。
『カフェ・ラ・ガゾン』は同僚が言っていたとおり一般的には店内で飲食するだけのお店で茶葉もケーキ類も一切販売していない。一般的には。
バッグチャームは1つずつ少しデザインが違っていてよく見るとシリアルナンバーが刻んである。
001/001ーーー価格ではないこの価値がわかるだろうか。
最近評判のイタリアのアクセサリーブランドのもので、オールハンドメイドのため手に入れるのが難しいとされている。
どちらも薔薇姫が獲得した取引先なのは間違いない。
このパーティー会場のホテルだってそう。ホテルのオーナー企業の社長が薔薇姫信者だってことは有名な話だ。
降参。
完敗。
薔薇姫は私と勝負なんてしてないけど。
薔薇姫の才能と美貌を羨んで私が勝手に敵視していただけ。
だって彼女は私の片思いの相手が熱い視線を送る女性なのだから。
薔薇姫、高橋由衣子さんは私が片思いする柴田竜之介の
同僚で現在進行形の片思いの相手ーーー
嫉妬の1つくらい許して欲しい。
「今日はどうもありがとうございました。休日出勤ですのできちんと手当は出しますと社長からの伝言です。それと、いまお配りしたのは新婦の高橋さんから皆様への感謝の贈り物です。私はこの後もまだ残らなくてはなりませんが、皆さんは自由に解散してください。まだパーティーは続いていますし、せっかくですからゆっくりお料理やアルコールを楽しんで欲しいと新郎新婦からの伝言です」
谷口さんは再度、私たちに会釈をして会場内にと足早に戻っていった。副社長の婚約者でもある彼女もまた挨拶回りなどで忙しいのだろう。来年には自身の結婚式も控えている。
「ね、見て。これすごいわ」
紙袋の中身をのぞいていた同僚が驚きの声を上げた。
15センチ程度の箱と8センチ程度の箱が二つ。それと何かのカード。
「ええ、これあの『カフェ・ラ・ガゾン』のケーキじゃない。あのお店、テイクアウトはやってないはずじゃないの」
「こっちの箱には素敵なバッグチャームが入ってるわ」
「最上階のスカイカフェのティーチケットまで」
息を呑むほどの中身。
たかが仕事の一環で受付業務をしただけの私たちには過分の配慮じゃないんだろうか。
谷口さんの言うとおりならこれを準備したのは薔薇姫ってことになるけれど。
「流石は高橋先輩だね」
いつの間にか竜が私の隣に立っていた。
竜は同僚達が薔薇姫からの贈り物を褒め立てる姿を見て目尻を緩ませている。
自分のことのように喜んでいるらしい。
私は否定するのも馬鹿馬鹿しくなって黙って頷いた。
確かに素晴らしい。
そしてこれは間違いなく薔薇姫が自分のコネクションを使って準備したものだろうと確信した。
『カフェ・ラ・ガゾン』は同僚が言っていたとおり一般的には店内で飲食するだけのお店で茶葉もケーキ類も一切販売していない。一般的には。
バッグチャームは1つずつ少しデザインが違っていてよく見るとシリアルナンバーが刻んである。
001/001ーーー価格ではないこの価値がわかるだろうか。
最近評判のイタリアのアクセサリーブランドのもので、オールハンドメイドのため手に入れるのが難しいとされている。
どちらも薔薇姫が獲得した取引先なのは間違いない。
このパーティー会場のホテルだってそう。ホテルのオーナー企業の社長が薔薇姫信者だってことは有名な話だ。
降参。
完敗。
薔薇姫は私と勝負なんてしてないけど。
薔薇姫の才能と美貌を羨んで私が勝手に敵視していただけ。
だって彼女は私の片思いの相手が熱い視線を送る女性なのだから。
薔薇姫、高橋由衣子さんは私が片思いする柴田竜之介の
同僚で現在進行形の片思いの相手ーーー
嫉妬の1つくらい許して欲しい。