彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
「三嶋だって俺のこと好きだろう」

そう決めつけられてむかっとした。

じゃあ、何。
コイツは前から私が自分のことを好きだと気がついてたって事か。
それで、知っていながら友達の距離を守って知らん顔して食事やお酒を誘っていたって。

それって私の気持ちを弄んでいたって事じゃないだろうか。

ーーー許せない。

こみ上げる怒りでふるふると身体が震えてくる。

「・・・私が竜のことを好きだって言ったら?ーーーはんっ。だったら何、どうだって言うの?!」

「え?」

私の地の底から響くような低い声に驚いた竜の腕の力が弱まる。その隙を突いて、半身を回して正面から竜の顔をぎっと睨みつける。

「み、三嶋。あのさ…もしかして怒ってる?」

「ええ、怒ってます。当然よね」

私は竜の片頬を抓りあげた。
いてて、という竜の声は無視した。

「だったらもうちょっと私の気持ちを思いやるとか何とかできなかったわけ?!」

「いや、いつも三嶋ってかわいいなって思ってたけど?」

「そんな言葉にはごまかされないわ。あんたは自分が何を言ってもコイツは俺のことが好きだから許してくれるとでも思ってたんじゃないの」

「まさか」と竜は肩をすくめる。

「でも、確かに油断してたことは否定しない。お前はいつも俺以外の男とは距離を置いてたから、どこかで安心してたんだ。でも、間違いだった。他の男の話をしている三嶋を見たら…逃してやるチャンスを与えるのはもうやめようと決めた」

逃がしてやる?

「どういうこと?」

「自分で言うのもなんだけど、俺、結構執着するタイプ」

竜が怪しい笑顔を見せる。

「今までは三嶋が俺以外の男を選ぶ可能性を残しておいてやった。猶予期間を与えていたつもりだったんだけど、こうなるとやっぱ無理」

な、な、な、

「早く逃げなかった三嶋が悪いってことで。覚悟して」

猶予期間とか
逃げるとか
覚悟とか、

「…ちょっと意味わかんない」

竜の頬から手を離して後退ろうとした私の腰が竜によってしっかりと抱え込まれる。

「もう時間切れなんだよ。タイムアウトだ。諦めな」


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