彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
*
休日出勤で対応した案件が思ったより早く片付き帰宅することを早希に連絡しようとスマホを手にするとタイミングよく彼女からのメッセージが入る。
外でのディナーの誘いだろうか、以心伝心だなとにやけそうになった自分を数秒後には殴りたくなった。
『あなたの子どもだという幼児を連れている女性がマンションの部屋に訪ねて来ました。そのまま自宅に上げることはできませんでしたのでホテルの部屋に移動しています。お仕事が終わったら合流してください』
その衝撃的な内容に目を疑った。
早希はきちんと根回しし、俺の仕事が終わったタイミングを見計らって連絡してきていたのだ。
”俺の子ども”?
信じられない言葉に身体が硬直する。
そんなものはいるはずがない。いったい誰だーーー
急いで早希が指定したホテルの部屋に向かう。
そこは仕事でよく使うホテルのスイートルームで部屋のチャイムを鳴らすと、すぐにドアが開いた。
開けてくれたのは早希ではなく、般若のような顔をした早希の親友、佐本さんだった。
いやもう彼女は高橋良樹と結婚したから佐本ではなく高橋さんだったがそんなこと今はどうでもいい。
「お待ちしてましたよ、副社長」
声に温度があるとすればおそらく氷点下だろう。
声だけでなく、俺の実兄である『社長ご自慢の我が社の薔薇の花』とか『薔薇姫』などと呼ばれている際だった美女の怒り顔に背筋が寒くなる。
そういえば、今日早希は彼女とランチすると言っていた。
「事と次第によっては早希は私のところに連れて帰るから」
急いで室内に入ろうとした俺に高橋さんの囁く言葉が刺さる。
わかってる。
彼女の怒りはもっともだ。俺は彼女の親友を一度酷い目に遭わせている。
だから二度と辛い目には遭わせない、絶対に守ると約束していた。
「とにかく詳しいことが知りたい」
そう言うと高橋さんが顎で示した。奥に行けと言うことだろう。
急ぎリビングに繋がるドアを開けると、女性二人とケーキを頬張る幼い男の子の姿が目に入った。
二人のうちひとりは勿論俺の愛する女性の早希。
もうひとりはーーー20代後半と思われるショートボブの細身の女性。その顔に見覚えは・・・全くないのだが?
休日出勤で対応した案件が思ったより早く片付き帰宅することを早希に連絡しようとスマホを手にするとタイミングよく彼女からのメッセージが入る。
外でのディナーの誘いだろうか、以心伝心だなとにやけそうになった自分を数秒後には殴りたくなった。
『あなたの子どもだという幼児を連れている女性がマンションの部屋に訪ねて来ました。そのまま自宅に上げることはできませんでしたのでホテルの部屋に移動しています。お仕事が終わったら合流してください』
その衝撃的な内容に目を疑った。
早希はきちんと根回しし、俺の仕事が終わったタイミングを見計らって連絡してきていたのだ。
”俺の子ども”?
信じられない言葉に身体が硬直する。
そんなものはいるはずがない。いったい誰だーーー
急いで早希が指定したホテルの部屋に向かう。
そこは仕事でよく使うホテルのスイートルームで部屋のチャイムを鳴らすと、すぐにドアが開いた。
開けてくれたのは早希ではなく、般若のような顔をした早希の親友、佐本さんだった。
いやもう彼女は高橋良樹と結婚したから佐本ではなく高橋さんだったがそんなこと今はどうでもいい。
「お待ちしてましたよ、副社長」
声に温度があるとすればおそらく氷点下だろう。
声だけでなく、俺の実兄である『社長ご自慢の我が社の薔薇の花』とか『薔薇姫』などと呼ばれている際だった美女の怒り顔に背筋が寒くなる。
そういえば、今日早希は彼女とランチすると言っていた。
「事と次第によっては早希は私のところに連れて帰るから」
急いで室内に入ろうとした俺に高橋さんの囁く言葉が刺さる。
わかってる。
彼女の怒りはもっともだ。俺は彼女の親友を一度酷い目に遭わせている。
だから二度と辛い目には遭わせない、絶対に守ると約束していた。
「とにかく詳しいことが知りたい」
そう言うと高橋さんが顎で示した。奥に行けと言うことだろう。
急ぎリビングに繋がるドアを開けると、女性二人とケーキを頬張る幼い男の子の姿が目に入った。
二人のうちひとりは勿論俺の愛する女性の早希。
もうひとりはーーー20代後半と思われるショートボブの細身の女性。その顔に見覚えは・・・全くないのだが?