彼女の居場所外伝 ~たんたんタヌキ~
「康史さん、お久しぶりです」
見覚えのない女性が俺に笑顔で話しかけてきた。
「君は・・・?申し訳ないけど、記憶にない。どこで会ったんだろうか」
どこの誰なのかわからない。
この顔といい小柄な体型といい全く見た覚えがない。
もちろん身体の関係などあり得ない。
仕事先で出会ったのだろうか。
仕事関係で回避できないパーティーや飲食店で出会った女性なのか。いや、見た感じ水商売をしているような雰囲気ではない。
「私のこと忘れるなんて酷いひとですね。私は今まで女手1つで子どもを産み育てていたのに」
女性の言葉に早希の目が悲しげに揺れ、隣に立つ高橋さんからは怒気のオーラを感じる。
「いや、君は誰だ?名前は?俺といつどういう関係だった」
「ひどいわ」
女性は唇を噛みしめ自分の膝に子どもを乗せる。
「この子の顔をちゃんと見て。あなたにそっくりでしょう。この子が私とあなたの関係の証拠よ」
「・・・・」
子どもはくりくりとした目を俺に向ける。
おそらく幼稚園に入るか入らないかくらいの年齢か。
大きな丸い目は俺に似ていないが、グレイがかった瞳の色は俺の家系由来のものに似ている。
そして鼻すじから顎の形までが俺にそっくりだ。
「もう一度聞くが、君は誰だ」
「ね、この子あなたにそっくりでしょ」
「いい加減にしてくれ。俺は君が誰かと聞いている」
「この子はリキ。3250gで生まれて健康よ」
「君の名前と俺との関係はなにかと聞いているんだが」
子どもの前で声を荒げるわけにはいかないと思いつつも口調は厳しくなる。
俺の怒りの気配を察して動いたのは高橋さんだった。
「リキくん、おねーちゃんとあっちの部屋で他のケーキを食べようか。リンゴジュースとオレンジジュースはどっちが好き?」
「んーとね、リンゴ」
高橋さんの手を握ってリキと呼ばれた男の子が立ち上がる。
「あっちにはテレビもあるからね。リキ君の好きな番組がやってるといいね」
「うん。ボクねモチベーマンが好き。おねーちゃんも一緒に観てくれる?」
高橋さんと手を繋いだ子どもが嬉しそうに返事をしている。
良樹ご自慢の妻である彼女の魅力は幼い子どもにも有効らしい。
「リキ君、モチベーマンってなあに?教えて?」
「知らないの?いいよ。あのねえーーー」
二人の姿が扉の向こうの部屋に消えると、早希が背筋を伸ばし座り直した。
「私は康史さんの婚約者です。あなた方の過去の事は関係ありませんが、現在と未来のことには関係がありますから同席させていただきます」
きっぱり告げて口を閉じた。
話は聞くが口を出す気はないらしい。
早希の精神状態が心配だが、とにかくこの女性からきちんとした話を聞き出さねばと思う。
見覚えのない女性が俺に笑顔で話しかけてきた。
「君は・・・?申し訳ないけど、記憶にない。どこで会ったんだろうか」
どこの誰なのかわからない。
この顔といい小柄な体型といい全く見た覚えがない。
もちろん身体の関係などあり得ない。
仕事先で出会ったのだろうか。
仕事関係で回避できないパーティーや飲食店で出会った女性なのか。いや、見た感じ水商売をしているような雰囲気ではない。
「私のこと忘れるなんて酷いひとですね。私は今まで女手1つで子どもを産み育てていたのに」
女性の言葉に早希の目が悲しげに揺れ、隣に立つ高橋さんからは怒気のオーラを感じる。
「いや、君は誰だ?名前は?俺といつどういう関係だった」
「ひどいわ」
女性は唇を噛みしめ自分の膝に子どもを乗せる。
「この子の顔をちゃんと見て。あなたにそっくりでしょう。この子が私とあなたの関係の証拠よ」
「・・・・」
子どもはくりくりとした目を俺に向ける。
おそらく幼稚園に入るか入らないかくらいの年齢か。
大きな丸い目は俺に似ていないが、グレイがかった瞳の色は俺の家系由来のものに似ている。
そして鼻すじから顎の形までが俺にそっくりだ。
「もう一度聞くが、君は誰だ」
「ね、この子あなたにそっくりでしょ」
「いい加減にしてくれ。俺は君が誰かと聞いている」
「この子はリキ。3250gで生まれて健康よ」
「君の名前と俺との関係はなにかと聞いているんだが」
子どもの前で声を荒げるわけにはいかないと思いつつも口調は厳しくなる。
俺の怒りの気配を察して動いたのは高橋さんだった。
「リキくん、おねーちゃんとあっちの部屋で他のケーキを食べようか。リンゴジュースとオレンジジュースはどっちが好き?」
「んーとね、リンゴ」
高橋さんの手を握ってリキと呼ばれた男の子が立ち上がる。
「あっちにはテレビもあるからね。リキ君の好きな番組がやってるといいね」
「うん。ボクねモチベーマンが好き。おねーちゃんも一緒に観てくれる?」
高橋さんと手を繋いだ子どもが嬉しそうに返事をしている。
良樹ご自慢の妻である彼女の魅力は幼い子どもにも有効らしい。
「リキ君、モチベーマンってなあに?教えて?」
「知らないの?いいよ。あのねえーーー」
二人の姿が扉の向こうの部屋に消えると、早希が背筋を伸ばし座り直した。
「私は康史さんの婚約者です。あなた方の過去の事は関係ありませんが、現在と未来のことには関係がありますから同席させていただきます」
きっぱり告げて口を閉じた。
話は聞くが口を出す気はないらしい。
早希の精神状態が心配だが、とにかくこの女性からきちんとした話を聞き出さねばと思う。