政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「蓮見、さ……あっ……」
「……どうした?」
「あ、蓮、見さん……っ」
沈み込むような快感の波に飲まれながら夢中で名前を呼び、言葉を繋ぐ。
私の言葉を聞いた蓮見さんは珍しく驚いた顔をし……それから、ふわっとした微笑みを浮かべ、私にキスをした。
いつにも増して濃かった時間が終わり、しばらくはぼんやりするしかできなかった。
体にはもう力が入らなくて、どこもだらしなくダランとしていて動かせない。
それでもこのまま仲良くベッドにいるのは……と思いいつものように身じろぐと、後ろから回った蓮見さんの腕に抱き寄せられた。
「あの、私、シャワーを……」
「もういいだろ」
思考回路はまだ半分ほどしか復旧していない。
その中で『もういいだろ』の意味を正しく理解するのは難しく、少し考え込む。
『もう』がなににかかっているのかもわからないし、たぶん、なにもよくはない。
けれど。
「もう少しここにいろ」
後ろから私をきつく抱き締めながら告げられた声があまりに甘く響くせいで、なにも返せなくなった。
だって、どうせ嬉しいと伝わってしまうような声しか出てこない。
返事をしない私を蓮見さんがギュッと抱き締め、頭に頬を寄せるので、胸が詰まってますます何も言えなくなった。
背中に感じる蓮見さんの素肌に胸が心地よく弾む。
しっかりと抱き締めている腕に、安心する。
全部を……私全部を、この人に欲しがってほしいと思う。
私だけを見て、私を想ってほしい。
こういうときだけじゃなく、いつも、ずっと、私個人を。
今までは大多数に対して漠然と思っていたことを特定の誰かに望む自分に気付いて、動揺する。
こんな気持ちを抱くのは初めてで、でも、悪いことではない気がして、戸惑いながらも蓮見さんの腕に触れようとしたとき。
ふと過去の出来事が頭に浮かび……その手を止めた。