政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


『春乃は特別。私、春乃以上に仲がいい友達ってこの先できない気がする』

そう笑ったのは、高等部の一年の頃仲が良かったクラスメイト。
中等部ではなんだかんだと〝社長令嬢〟と一線引かれることが多かったから、そんな風に言ってもらえてすごく嬉しかった。本当の友達になれたと思った。

そんな矢先、放課後の廊下で彼女の声を聞いた。

『だって、春乃、相当な令嬢でしょ? いざってとき、役に立ってくれそうじゃん。家に金ある上、本人は単純で人疑わないバカなんだもん。良くも悪くもお嬢様っていうか。そりゃ利用するでしょ』

教室の中で『うわー、ひどーい』という誰かの声が続いたけれど、言葉だけでトーンは楽しそうに弾んでいた。

ショックだったのは、彼女が言っていたとおり、私は彼女の言葉を信じて疑っていなかったからだ。まさか嘘だとは思わなかったから、傷ついた。

だから、そのあと、その彼女に頼られたとき断った。

『春乃、お願い。彼氏がバイト先の売上使い込んだのが店にバレて、今日中に返済しないと警察に届けるって言われてるの。お金、貸してくれない? 友達でしょ?』
『貸せないし、もう友達じゃない』

その彼氏がどうなったかは知らないけれど、そのあと校内に〝友達を見放した〟と噂が立った。

中等部の頃から付き合い続けていた当時の彼氏の戸村くんにも『困っていたなら貸してあげればよかったのに。持っているものを人に分け与えないのは人として冷たすぎる』と、相手の味方みたいな言い方をされた上、後日向こうから振られるというダブルパンチをもらった。

『嫌いになったわけじゃないけど……ごめん。うっとうしいんだ』

そこまで言われたら、私だって落ち込む。


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