政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「なんでも……ちょっと、嫌なことを思い出して……」

肩を震わせる私を支えながら起こした蓮見さんが、そのまま私を抱き締める。

「大丈夫だ。俺がいる」

落ち着かせるように頭や背中を撫でる手がどこまでも優しくて、苦しくて涙が落ちた。

もう、無理だ。
触れられた場所から喜びが広がり、それをすぐに痛みが追ってくる。

体も心もズタズタになっていくようだった。

〝経済力があれば誰でもいい〟なんて言った罰だ。

誰でもよくなんてない。

……蓮見さんがいい。
私は、蓮見さんがいい。




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