政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
加えて、そうこうしているうちに仕事でドイツに行った秋斗からは春乃の話の続編が聞けなくなり、今、彼女がどうしているのかがわからないという事態に陥り焦りが生まれた。
〝勝気だけど、デリケートで結構泣く〟と説明していた春乃が、秋斗がドイツにいる間にひとりで泣いていたらどうするんだと気を揉んだし、あれだけ毎日聞かされていた話を突然されなくなるこちらの身にもなれと、勝手な秋斗に怒りすら覚えた。
春乃のことは、俺に会いにきたところで体よく断るつもりだったし、姿を現さないのならその方が面倒でなくていいはずなのに、いつの間にかそうは思えなくなっていた。
「よく知りもしなかったはずの春乃に、気付いたら惹かれていた」
握った手に力をこめる。
微笑んで告げた俺を、春乃の人よりも少し色素の薄い瞳が見つめていた。
気持ちに気付いてからは早かった。
春乃に対してずっと抱いていた、じれたり暖かくなったりと忙しく色を変えていた感情がなんなのかがわかれば、あとはこちらに誘導するまで。
幸い、春乃は結婚の条件に〝経済力〟を挙げている。
正直、しっかりと情緒のある彼女の性格からして本気で〝経済力〟があればいいと考えているかは疑問ではあったが、父親や祖父、その上の先祖が大きくした会社に感謝しつつ、タイミングよく転がり込んできた提携話のついでに、春乃の話題を出した。