政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「俺がどれだけ根回ししたと思ってる。おまえがつまらない男と付き合いだすたびに、いちいちその男のところまで出向いて話をつけて……十歳近く歳の離れた相手にぽかんとした顔をされる気持ちがわかるか」
胸が恋愛とは違う理由できゅんきゅんしていたのだけれど、ややしかめた顔で問われ、驚く。
私が付き合いだすたびにって……と、自分の過去を回想して答えを見つけた。
「もしかしていつも私が彼氏に振られてたのって蓮見さんが原因だったんですか?」
だからやけにスパンが短かったのかと納得と驚きが混ざった感情で聞くと、蓮見さんは表情ひとつ変えずに答える。
「全部ではない。俺が話をつけたのは後半の三人だけだ。きつい態度をとったからかひどく萎縮していたが……まぁ、仕方ない」
「話をつけたって……」
普段の態度から暴力的な話の持っていき方はないだろうけれど……と思っていると、蓮見さんは目を伏せ「大事にしてやってほしいと頼んだだけだ」と返した。
その言葉に、しばらく呆けてからふっと笑みがもれた。
過保護にもほどがあるし、そもそもそんなお願いを私ときちんと対面したことのない蓮見さんがするのはどうかとは思うものの、蓮見さんの気持ちを嫌だとは感じなかった。
惚れた弱みだとか、恋は盲目だとか、色々と当てはまる言葉はありそうだ。でも、どうしても迷惑だとは思わないのだから仕方ない。
当時の彼氏も驚いただろうなと笑ってしまう。
ずいぶん年上の、しかもこんなに美形でしっかりとスーツを着込んだ男性に頼み込まれるなんて……と考え、元彼たちが口々に言っていた『重い』の意味に気付いた。