政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「重かったの、私じゃなくて蓮見さんだったんですね」
「真摯に向き合ったまでだ。それを重いと捉えたならたいした気持ちじゃなかったんだろう」

悪いと思っていない顔で言われる。
十歳も年上の男性に〝大事にしてやれ〟なんて言われたら、そりゃあみんな重く感じるし、早々に手を引くのもうなずけた。

「私、振られるたびに悲しくて、結構泣いたんですけど」
「知るか。すぐに俺のところにこないお前が悪い」

蓮見さんはそう言ったあと、少しだけ眉を寄せて続けた。
今度は悪いと思っているような顔だった。

「泣かせたのは悪いと思ってる。それでも、どうしても欲しかった」

そんなふうに言われれば、文句なんか言えないしそもそも過去のことで蓮見さんを責めるつもりもない。

それに、元彼たちの気持ちがそこまでじゃなかったという蓮見さんの意見はきっと正しい。
けれど、そこまで想っていてくれたならどうして……と腑に落ちない部分はあった。

「でも、同居初日、私よりも仕事を優先させてましたよね。それに、私のことを知っていたなら教えてくれたらこんなに悩んだりしなくてすんだのに」

蓮見さんを好きだと気付いてからの私は、今思えばかなり迷走していた。
柳原さんが相談に乗ってくれなかったら今だってきっとこうして落ち着いて向き合ったりできていなかった自信がある。

それに、蓮見さんが最初から言ってくれていたら、変な意地を張ることもなかったのに……と考えていると、蓮見さんは片眉を上げて私を見た。


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