政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「だから、体調を心配して出張中の半月、毎日メッセージをくれていたんですか?」
「それもあるが、文章なら面と向かわない分、変な気を張らずに話ができるだろう。半月後、出張から戻ったとき、春乃の俺に対する警戒心が少しでも和らいでいればいいと思った。だから、帰るなり俺の後ろをついて回っているのを見て、嬉しくなった」
ふっと笑みを浮かべて言われる。
玄関から洗面所、そしてリビングまで蓮見さんの後ろをついて回ったのは無意識だっただけに恥ずかしい。
「ご両親の手前、婚姻届も提出しない状態で長い間同棲するつもりはなかった。けれど、春乃を焦らせるつもりもなかったから、数ヵ月は様子を見るつもりでいた。まずは部屋や環境に慣れて、それから俺に慣れていけばいいと思った」
私は、家以外ではなかなか寝付けない。
一度寝入ってしまえば大丈夫だけれど、寝入るまでに時間がかかる。
だから私も、蓮見さんが出張すると聞いて安心していたのはたしかだった。
全部、私を気遣ってくれてだったのか……とじんわりと感動していたのだけれど「それに、同じ部屋で寝たら気持ちが抑えられる気もしなかった」と続いた言葉に、〝感動〟の文字が一瞬にして消えた。
蓮見さんとそういうことはしていても、そういう話をするのは初めてなので、目を伏せながら口を開く。