政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
そうか……拒絶されるための強引な態度だったのに、私は誤った方向に喧嘩を買って受け入れてしまったのか。
蓮見さん、相当困惑したのだろうなと思うと少しおかしくもなるものの、羞恥心がそれどころではなくて穴を掘りたい気分だった。
「俺に組み敷かれながらも目を逸らさないで見上げてくる春乃に、理性が効かずに本能のまま抱いたのは悪かったとは思っている」
目を伏せながら言った蓮見さんが、私を見る。
「ずっと俺の方を向かせたかった。当時は無意識だったが、大学の頃、秋斗しか瞳に映さない春乃を見たときからおそらくそう思っていた。おまえが俺以外の男にふらついていると知ったときには頭にきたし、おまえが頼りにするのも、甘えて手を伸ばすのも、安心して眠るのも、全部俺が相手でなければ嫌だと思っている」
突然の告白に目を見開く。
相変わらず涼しそうな顔のままだけれど、その瞳は無感情には見えない。一緒に過ごした時間のなかで、彼の表にはでにくい感情の機微に気付けるくらいまで慣れたからだろうか。
蓮見さんは私の手を握ったまま続けた。
「単純で真っすぐで、かと思えば変なところで意地を張ったり、一緒にいて飽きない。他人に優しくできるところは少し目に余るが春乃の長所だし、そこも含め気に入っている。豊かな表情も柔らかく心地いい声も顔立ちも好きだ。誰よりも可愛いと思うし愛しい」
いったい、何が始まったのかと思った。
急に私を褒めだした蓮見さんにただ呆然としていると、蓮見さんは少し考えるような顔をし、それから再度私を見た。