政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「ここ以上に居心地がいい場所なんて、ありません。だから、ずっと座ってます」
こぼれそうになる涙を堪えながら言い、微笑む。
「でも、ひとつ間違ってます。私はもう〝蓮見春乃〟です」
私の訂正を受けて、蓮見さんがおかしそうに笑った。
上下している蓮見さんの背中に腕を回ししがみつくように抱き締める。
今までの行為の余韻が抜けずに、呼吸が震えていた。
「春乃、大丈夫か?」
肘で体を支えて空間を作った蓮見さんが私の頭を撫でながら聞く。
彼のおでこに浮かんだ汗が乱れた前髪を伝っている。寝室の照度の抑えられたライトにキラキラと光る汗にすら胸が締め付けられるのを感じた。
「はい……大丈夫です」
蓮見さんが私に確認したのは、行為がいつも以上に濃厚だったからだろう。
散々じらされたあとは泣き出すくらいにぐずぐずに溶かされて、何度も優しく追いやられた。
本能のまま声を出して求めてしまった自分を思い出すだけで恥ずかしくなる。
でも、どうしていつもと違ったのだろう。蓮見さんも入籍が嬉しかったのかな、と考えていたとき、蓮見さんがふっと微笑んだ。
「日中は、物欲しそうな顔をしていたおまえを強引に連れ出したからな。満足してくれたようでよかった」
その言葉に、一気に顔が熱を持った。
やっぱりあの時、そういう顔をしていたのか。
そして、蓮見さんにもしっかり気付かれていて、だからこんな……と居たたまれない気持ちになり目を伏せた。
はしたなくて恥ずかしい。