政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「で、その戸村くんが連絡取りたいって言ってきたんだけど、俺としてはいい印象なかったから番号は教えなかった。でも家の固定電話は名簿とかで知ってるだろうから、迷惑なら母さんに口止めしておいた方がいいぞ」
「そうだね。でも、今頃なんの用なんだろう」

大学の付属校だったから、高等部でも大学でも一緒だった。でも、別れてからはただの同級生がするような会話しかしていなかったし、連絡だって取り合っていなかったのに。

考えていると、大祐さんが小さく息をつく。

「昔の同級生や知り合いが突然連絡をよこす場合、ほとんどが宗教関係かマルチだろう。お義母さんに説明してやんわり断っておいてもらえばいい」
「お、やきもち?」

即座に突っ込んだ兄に、大祐さんは眉を寄せ「トラブル回避だ」と答えたのだった。



そんな事情から、その日の夜さっそく母に連絡を入れたのだけれど、相手の方が先手だったらしい。

私からの電話を『ちょうどよかったわ』と受けた母から戸村くんの連絡先を伝えられてしまった。

母からの情報によると、戸村くんは卒業後はホテル事業に携わり、現在は大学時代の先輩と数人で建築会社を設立して頑張っているらしい。

そんな話を聞けば同業者である父は放っておけず、『連絡してあげなさい』という流れになる。
父からの言葉なので大祐さんもうなずかざるを得ず、私も渋々携帯を手に取り……望んでもいない逢瀬の約束をしたのだった。


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