政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「私は、あの頃と変わらず冷たいから、自分の持っているものも父が守ってきたものも誰かに分けるつもりも貸すつもりもない。それを聞いた上でも私と話したいことが戸村くんにあるなら聞くけど……どう?」
正直、戸村くんと対峙するのは気が重かった。
兄同様、私も戸村くんに対していいイメージはないから。
でも、実際に会ってみたら来てよかったと思えた。
これはいわば私のリベンジマッチだ。
高等部の頃、突然突き放された気がして傷ついてなにも言えなくなった私の、リベンジマッチ。
負けるもんか、とじっと見ている先で、戸村くんは眉を上げ、それから目を泳がせる。そして、結果的には降参とばかりに面倒くさそうなため息をついた。
「いや、ないかな」
そう笑ったあと、戸村くんが私を見る。
「宮澤、変わったね。高等部の頃は俺の行動の裏をとるような性格じゃなかったのに。むしろ警戒心がなさすぎて呆れるくらいだった」
戸村くんは、ふーと息を吐きカップに手をかける。
「宮澤が社長令嬢っていう立場にコンプレックスを感じているのは見ていてわかった。だからクラスから庇うようなことを言えば少し好意を持つかと思ったんだけど……実際には俺の十倍くらい懐いてきたからちょっとびびった」
やっぱり、あの時から計算だったのか。
今更ショックは受けないと思っていたけれど、少し心の奥が痛んだのを感じた。