政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「二年ほど前から、周りに結婚についてよく聞かれるようになった。今後も独身でいた場合、断りにくい話も持ち掛けられるかもしれない。そうなったら面倒だと考えていた時、宮澤社長から春乃の話が出たから丁度いいと受けたまでだ」

一応は納得のいく説明だったので「なるほど」とうなずく。

蓮見さんほどの立場のある人が面倒だと思う相手なんてそういないようにも思うけれど、世界は広い。
石油王の娘だとか、海外のとんでもないやり手実業家の娘だとか、それこそ、企業提携をより強固のものにするために国を跨いでの政略結婚だってあり得そうだ。

石油王の娘との結婚生活はたしかに面倒に思う。
金色のキラキラしたあれこれに囲まれて普通に生活できる人と価値観なんて合う気がしない。ラクダを衝動買いされたら百年の恋も醒める自信がある。

それと比べたら私は安パイだと自分自身で納得する。
別に私でなければならない事情はないにしても、それはタイミングがよかったにつきるのだろう。

うちは一応しっかりした家柄ではあるし、蓮見さんが結婚の弊害になると思うような事件は会社的にも個人的にも起こしたことはない。

それに、こんな言い方は癪だけれど、もし関係がごたついてうちが嚙みついたとしても、蓮見さん側からしたら脅威でもなんでもない。

つまり色々と丁度良かった、それだけだ。


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