政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
紅茶を飲みながら気持ちを整えてカフェを出る。
そのまま駅に向かおうとしたところで、大通りの端に駐車している車に目が留まった。
大祐さんの車だ。
一応仕事の可能性もあるので気軽に近づくのを躊躇し、まずは携帯を確認する。
そこに蓮見さんから《外で待ってる》というメッセージが届いているのを見てから足早に車に向かった。
今日、ここで会うことは報告していたけれど、まさか来るとは思わなかっただけに驚きながら助手席のドアを開ける。
「どうしたんですか?」
乗り込みながら言うと、大祐さんは私がシートベルトをしたのを確認してからウインカーを出し車道の流れに乗った。
「仕事が早く切り上げられたから寄ってみただけだ。店と時間は聞いていたからな。無事、話はついたのか?」
「はい。宗教でもマルチでもなかったです」
〝じゃあなんだったんだ〟と目線で促され、答え方に困る。
「昔の誤解を解いたり……です。戸村くんは、私が思っていたよりも嫌な人ではなかったってわかりました。だからってその先に何があるわけでもないですし、最後は〝お幸せに〟って別れました」
「そうか」
いつも通りの返事だった。
けれど、そこに割り切れないなにかが含まれているように感じ、運転する横顔をじっと見た。