政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
「それもそうだな。たしかに問題ない」
それは、暗に今後も私を想い続けると宣言しているようなもので、そんな発言をさらりとする大祐さんから見えないように、熱を持った頬を手で隠した。
気持ちを確かめ合ってからというもの、大祐さんはこういうことを平気で口にする。
〝大祐さん〟と呼び慣れるのとは違い、涼しい表情から発せられる甘い言葉に動揺しなくなるまでには相当な時間が必要そうだった。
料亭を貸し切っての両家の顔合わせはつつがなく終わり、式場も候補をふたつまでに絞り込むことに成功した十一月下旬。
うちの両親の旅行のお土産を渡すために訪れた蓮見家で、その話題は出た。
「〝BLOSSOM〟……ドレス専門店?」
向かいのソファに座りニコニコと笑顔を向けるお義父さんとお義母さんがテーブルに差し出したのはそこそこ厚さのあるカタログ。
表紙には、シックな雰囲気の階段の中ほどに立つ、ウエディングドレスに身を包んだ女性が映っていた。
階段に広がるドレスの裾が見事だな……と思いながら顔を上げると、お義母さんが「実はね、そこの社長さんたちと知り合いなの」と切り出した。
「私、趣味で社交ダンスをするんだけどね、大会前によく作ってもらっているのよ。腕も確かだし、もともとはウエディングドレスの専門店だからオーダーするなら丁度いいと思って」
「え、あの、でも一生に一度しか着ませんし購入するつもりはないんです。レンタルで構わないと大祐さんとも話をしていて……」