政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


少しの笑みを浮かべながらの大祐さんの指摘は大正解だった。

御園仁美とは、高等部三年間運悪くクラスが同じだった。見た目は美人で、スタイルもよかった。でも性格がどうしても合わなかった。

他人の物を羨む傾向が強い彼女は口癖のように『いいなぁ』とつぶやき、譲渡が可能なものならば二言目には『ちょうだい?』とつないだ。

彼女自身、〝金持ちの子が集まる〟と周りから評されていた付属高等部内においても、恵まれていた方だと思うし、他のクラスメイトからもそう認識されていたはずだ。

それなのに、『いいなぁ』と何かにつけて言ってくるのが理解できず、結局三年間その謎は解けないままだったので気持ちの悪いまま終わっている。

私は私で、その頃はとくに自分の立場についてああだこうだ言われることを過敏に感じ取っていたから苦手意識もある。

だからもしそんな御園が、これから会う〝御園さん〟だったら嫌だなぁと考えていたとき、車が止まった。

赤茶色のレンガ調の外観のお店の入り口上部分に〝BLOSSOM〟という白い看板が掲げられている。
蔦が似合いそうな外観だけれど、緑はなく、すっきりとしていた。

車を降り、大祐さんがロックをかけた時、ガラス戸が店の内側から開けられた。

「蓮見様ですね。お電話いただいてお待ちしておりました。私、いつもお義母様のドレスを担当させていただいております、御園仁美と申します」

「ああ。今日はよろしく頼む」と応じた大祐さんが私にチラリと視線を向ける。

〝こいつか?〟と聞いてくる眼差しに、私は苦笑いを浮かべコクンと小さくうなずいた。



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