政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
でも……こうして話していてわかった。
やっぱり蓮見さんはこの結婚に気持ちは求めていない。本人の口ぶりからもわかるし、それに、そうでなければ〝夫〟は同居初日に家を空けない。しかも半月も。
〝妻〟の私がどうでもいい、これ以上ない証拠だ。
ならば私も破棄に向けて動き出そうと決意して蓮見さんに視線を定めた。
最終目的は婚約破棄。それも、できるなら蓮見さん側からの破棄が好ましい。
いくらこの政略結婚に仕事は関係ないとは言え、こちらからの一方的な破棄となれば、提携の契約内容がうちの会社に不利なものになる可能性があるし、それは避けたい。
あと、私から破棄して両親にわがままだのなんだのと色々言われる展開も避けたい。
普段穏やかな両親は、たまに逆らうことを許さないような圧倒的なオーラをまとうから怖いのだ。
「ところで、今後のためにお聞きしたいのですが、蓮見さんはどんな女性がタイプですか?」
急に踏み込んだ問いをしたからか、蓮見さんはわずかに眉を寄せた。
そして、疑惑の浮かんだ眼差しでしばらく私を見てから口を開く。
「家庭的だとか献身的ではない方がいい。基本的には一定の距離を保ちたい。ベタベタ触れてくるのは論外だし、感情を見せられるのも面倒だな」
いっそ人形とでも暮らしたらいいと思いますが、と喉元まで出かかった声を飲み込む。
そんな絵に描いたような仮面夫婦私は絶対に嫌だと思いながら、さきほどの蓮見さんの好みのタイプを頭の中で復唱する。