政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい
この日のメッセージは、七往復した。
その間、ゆっくりと時間をかけてカモミールティーを飲んだおかげか、前日よりもスッと寝入れたので、一応お礼を言っておくべきかと思い、翌朝蓮見さんにメッセージを送った。
それが、私から彼に送った初めてのメッセージだった。
《おはようございます。昨日はゆっくり眠れました。ありがとうございました》
《そうか》
なんとなく、本当になんとなくなのだけれど、たった三文字の返信にガックリした自分に驚きなにかの間違いだと言い聞かせた。
その後も、毎日二十二時前になると蓮見さんからメッセージが届くので、その時間前にお風呂を済ませ、カモミールティーを準備し、ソファで携帯を傍に置き待機する……というルーティンが出来上がっていた。
《南側の窓は、開けても構わないがロックをかけておけ。十センチ以上開かなくなる。防犯上、在宅時でもひとりの時には基本的には施錠しておいた方がいい》
四日目、そんなメッセージが届いたときには、八階だから大丈夫だろうと開け放っていた窓をこっそりと閉めた。
《時間が余るようなら、寝室の隣の部屋に本棚がある。どれでも好きに読んで構わない》
蓮見さんが自室として使っているであろう書斎らしき部屋に好きに入っていいと言われたときには、ドキドキした。
おかしな趣味でも発見してしまったらと考えると怖かったけれど、〝書斎〟という言葉を具現化したような部屋はどこまでもクリーンでいらない心配だった。