政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


立派な木枠の本棚に並んでいた本は、仕事関係が六割、小説や画集が四割で、小説のジャンルはヒューマンやミステリーと私の好みと合っていた。

メッセージの内容は、いつも私の体調や睡眠、生活を気にする言葉から始まり、蓮見さんの出張先の話になるときもあった。

《今日は茶屋街にある料亭で食事をしてきた。三味線や太鼓の音がして、風情があった》
《素敵ですね。小さい頃、家族で行った記憶がありますが、また行ってみたいです。大人になったからこそわかる魅力がたくさんありそうですし》

私から家の中のことで聞くこともあった。

《あの、お風呂のジェットバスは結構ゴゴゴって音がしてても問題ないでしょうか。気持ちはいいんですが、振動と音がちょっと気になって》
《問題ない。浴室内だから大きく聞こえるだけだ。そのマンションは空調も防音設備も最上級のものを取り入れている。周りへの気遣いは無用だ。あるものは変な遠慮はせずに使え》

そんな話を、毎日少しずつ交わし……そして、すっかり日常と化した十三日目。

《明日帰る。土産の希望があれば聞いておく》

蓮見さんからのメッセージを読んだ途端、胸が小さく跳ねた。
蓮見さんが帰宅する予定に、緊張というよりはときめきのような鼓動を心臓が弾きだした気がして首を傾げつつ、出張先についてネットで検索する。

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