政略夫婦が迎えた初夜は、あまりに淫らで もどかしい


「えっと、なにが有名なんだろ」

色々と有名なお菓子や特産物が羅列されるなかから、あまり重たくなさそうなものを選び、メッセージを返信する。

その後、二、三通やりとりしてから蓮見さんの《おやすみ》を合図にベッドに入る。

最初は寝付けなかったこの部屋でも、もうなんの問題もなくすぐに寝入ることができるようにまで慣れていた。
同居開始と同時の蓮見さんの出張には、初めは文句も浮かんだけれど、今思えばあのタイミングで半月ひとりにしてもらえたのは私的にはよかったのかもしれない。

まず、部屋に慣れることができたから。
慣れない部屋で、慣れない蓮見さんとふたりで急に生活を始めるのにはやっぱり少し無理があった。

だから、ちょうどよかったのだと今思う。

蓮見さんとのメッセージのトークルームは、いつの間にか何度スクロールしても初めてのメッセージにたどり着かないほど並んでいる。

蓮見さんが送ってくるのは淡々とした言葉だけれど、それでもそのひと文字ひと文字を打ってくれているのだと思うと冷たいものだとは思えない。あと、案外マメだ。

そしてたぶん、そこまでおかしい人でもない。

「思わぬ産物とでも言うのかな」

どこか事務手続き感のただよう、たまに驚くほど短いメッセージのやりとりでも、毎日繰り返せばそれなりに相手との距離は縮まるものなのかもしれない。

実際に蓮見さんと顔を合わせたのは半月前で、しかも一時間ちょっとだけということを考えると不思議な気分だった。

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